僕が企業分析を行うときは営業利益率という指標に目を向けます。営業利益率の裏にはその会社の強みが隠れていて、ビジネスモデルなど高収益構造を見つける入り口になるからです。
(8/31の四季報Investorsの中で行った内容を記事にまとめてみます)

■営業利益率1%の会社を10%にするにはどうするか?
頭の体操のつもりで、こんな質問について一緒に考えてみてください。
 
図1

営業利益率の1%の会社があり、会社の商品の平均単価は1万円だったとします。この場合9900円がコスト(原価、人件費、広告費など)で、100円が利益になっているということです。
さて、この会社の営業利益率を10%に上げようとするにはどうしたら良いでしょうか。あなたが勤めている会社や保有株とシンクロさせて考えてもらってもよいと思います。その会社の利益率を10%まで引き上げるにはどうしたら良いでしょうか。
ちょっとだけ考えてみてください
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■答えは大きくは2つ
この答えの方向性は大きくはこの2つしかありません。
  • 価格を上げる
  • コストを下げる
この例でいうと、「価格を上げる」は販売価格を10,900円ぐらいにするということで、「コストを下げる」なら値段は変えずにコスト部分を9000円まで下げればいいということになります。
論理的には異論はないと思いますが、実際にこれを実現できるかは別問題になりそうです。

■価格を上げるためには
値上げ実現と密接に関わっているのは、実は「お客さんの比較圧力(≒競争環境)」です。
例えば鳥貴族は2017年に1品単価を280円から298円に引き上げました(約6%の値上げ)。このニュースが出たとき株価も収益力の大幅アップを期待して上昇しましたが、結果的には客が減ってしまい店舗売上が前年度割れになってしまいました。値上げをしても運営効率が下がり(コストが上がり)収益拡大にはつながらなかったということです。
たかが18円アップ、8品でも150円程度のことなのですが、飲食はお客さんにとって選択肢は山ほどありますので、別の居酒屋でもいいか、他の外食でいいか、なんなら家で食べてもいいかという多様な選択肢があるため値上げはうまくいきませんでした。

一方で、プリンターのインクやエレベーターの保守料金の値上げならどうでしょうか。直接値上げするとお客さんに悪印象なので、新機種のものから値上げするというやり方で実施したとします。この場合は割とスムーズに値上げが可能になるのではないでしょうか。というより、実はプリンターのインクやエレベーターの保守料金はこのようなステップを経て値上げをお客さんの心理的限界ぐらいまで引き上げてきて、その結果高収益を生み出しています。
お客さんの視点に立って考えると、比較商品は「純正品以外のインク」や「メーカー外の保守」しかない上に、これらを選択すると、
  • 本体が壊れる可能性がある
  • メーカー保証が受けられなくなる
といった心理的ハードルがあり、鳥貴族の例に比べるとお客さんの選択肢がかなり狭いことがわかります。また純正品のインクの粗利は8~9割と言われており、普通の競争環境の商品と比べると2倍以上の価格水準になっていますが、市場はこれでも受け入れてくれます。

ここまで、値上げに関する考察をまとめるとこんな感じです。
  • お客さんは常に比較圧力をかけてくる
  • その一方で比較する商品がないと、なすすべなく値上げを受け入れてくれる
  • 独占に近いときは、値段を通常の2倍以上にしても大丈夫
  • お客さんは企業収益には関心がない(営業利益率が5割だろうと、赤字だろうとどうでもいい)
[参考記事]

■コストを下げるとどうなるか
コストを下げるには、効率運営、人件費を削る、仕入れ価格を下げる(スケールメリットなど)などが考えられます。これらのコストダウンの取り組みははどの会社でも一般的に行われていると思いますが、ポイントは"他社よりも"コストダウン力が強くないと利益率向上には繋がらないというところです。なぜならせっかく10%分のコストダウンを実現しても、他社も同様にコストダウンができてしまうと10%分値下げ余地が生まれるため、値下げ競争が起きて結果的に利益向上につながらないからです。

ただし時折この「コストダウン力」が会社の強みの中核になっている企業が存在しており、こういう企業は驚異的な強さを発揮します。ファーストリテイリング、ニトリがこういう企業の代表例です。大きく考えると、ECサイト(リアル店舗に対し販売効率が圧倒的)もこれに該当します。保有銘柄の「やまみ」もこのカテゴリーに入ります。

■高収益企業が持っている強み
ここまでまとめると、営業利益率が10%を超えるような高収益企業は
  • 競争環境が緩やかであったり、お客さんの比較圧力が小さい仕組みを持っている
  • 競合他社よりも強く秀でたコストダウン力を持っている
このどちらかを持っている可能性が高いということになります。これが僕の企業分析の基本フレームワークで、このような強みを見つけることで未来の収益力の推測につなげています。

新刊の中ではこういった視点をもった企業分析例を載せています。よろしければどうぞ。